iOSアカデミアブログ

リリース済アプリ数140超!ラグナロク(株)代表Teccoさんの世にモノを出す力

個人開発アプリ数脅威の140超え!他にも幾多の自由で華々しいご活躍で飛ぶ鳥を落とす勢いのTeccoさんが、今回遂にiOSアカデミアにご登場です!組織開発や個人開発を通して世の中にモノを生み出し続けるエッセンスについて、詳しく伺います!

プロフィール

Tecco(てっこ):以下「Teccoさん」

本名「西本誠」さん。新卒でキヤノンにご入社、趣味でアプリ開発を始め、約140本のアプリをリリースされています。本業でもnanapi(現Supership)でスマホアプリ開発に従事した後、幾多の企業でリードエンジニアやリーダー、採用責任者等を歴任、アプリの改善や規模拡大、会社全体の組織改編にも従事され、最大同時に10社ほどのスタートアップのアプリ開発・チーム運営サポートも実施。現在はラグナロク株式会社を設立し代表取締役CEOにご就任。詳しくは本インタビューで!

インタビュワー
SIerでの人事担当、言語教師等を経て現在はインタビューを中心に活動するワーママライター。最近は娘のイヤイヤ期に翻弄され気味。

Teccoさん「ずっと暇」多産クリエイターの実態と背景

ラグナロク株式会社代表として

―――早速ご紹介しましょう!Teccoさんですー!本日はどうぞよろしくお願いいたします!

よろしくおねがいしまーす。

―――Teccoさんというと、冒頭の通り140個以上の個人アプリ開発や大企業での組織開発など、もはやキラキラしすぎて本体が見えない(失礼)御方!お手数ですが、現在のTeccoさんが主に「何をしている人」かについて教えてください!

(笑)一応、ラグナロク株式会社という会社を立ち上げて代表をしています。事業内容は自社サービスが半分、他社のお手伝い・大企業の新規プロジェクトのお手伝いが半分くらいです。後者では、例えば大企業で今までエンジニアリングを外注してきたところを社内でエンジニア組織を作るにはどうしたら良いかといった部分を解決しています。

―――元々のTeccoさんの活動を会社名義にシフトされていった感じでしょうか?

個人でしているものもありますが、そちらは収束させていって、もっとサービスをスケールさせるために、チームでサービスを伸ばしたい、という感じですね。

―――バンド活動についても気になって仕方がないんですが!そちらはお仕事で?

バンドは、大学時代です。北海道から上京するときにメンバーと離れるのでやめることになって、YouTubeやニコニコで作ったものを挙げたり、近くに来た時にセッションしたりしていました。ギターの子が北海道に帰ってしまってからは、あまり活動していないです。まぁ趣味としてなので、仕事ではないです。

―――超多忙に決まっているのに、実は今でも実況動画上げていたりして、クリエイター気質が伺えるんだよなぁ。

いや、僕ずっと暇ですよ…(笑)

―――どういうことなの…

自分で考えて事業をやりたかった

―――少しお話戻して、ラグナロク株式会社設立のご経緯も伺いたいです!

元々「会社を作ろう」というより「会社員を辞めたい」が大きかったです。他人から言われることより自分で考えて事業をやりたくて、35歳で設立するつもりがどんどん予定が早まって、30歳の時に設立しました。

―――御社で取り扱っていらっしゃるサービスはどのようなものでしょうか。

最近では、Camecon(カメコン)というフォトコンテストのサービスを運営しています。リリースから1年ほどで順調に伸びてきていて、現在の会員数は15,000人を超す位です。フォトコンテストには、観光業や自治体が興味を持っているので、東京都や北海道とお話したりですね。僕はセールスメインで動いています。まぁ元々営業部に居てそちらの方が長かったくらいなので。

キヤノンでは新規開発部・営業部の2足の草鞋

―――「営業部」、新卒でご入社されたキヤノン時代ですね!

キヤノンでは、実は入社後僕だけ「どこに行かせてもやばそう」ということでなかなか部署が決まらなくて。結果、最初は通常5年ほど実績を積まないと配属されない新規開発部に行かされました。キヤノンは既存製品が強く、新規開発にはそれほどリソースを割かないので1年未満でその部署が潰れて、そこから営業部に配属です。そこでも裏で半分新規開発を続けながら、辞める1年程前に新規開発部へと再配属されたりもしました。

―――お仕事のベースがここで築かれたのですね。個人開発も同時期からスタートされていますが、こちらのきっかけは?

暇だったからです(笑)

―――なんかもう逆に怖い。絶対後で詳しく伺いますからね!

組織開発では某新聞社の開発内製化など

―――まず、組織での開発についてお話頂きましょう!

歴史ある会社の盲点とは

―――企業でのエンジニアリング指導ではどのような指摘をされることが多いですか?

アプリ開発に限らず、技術依頼って頼む側がそれについて全然わからないことも多いです。歴史ある会社でも見積が適当だったり、新しい技術に疎くて今なら3日で実装できるものに1ヶ月以上かけたりもしています。例えばプッシュ機能なども、今の僕なら30分ほどで付けられますが、昔の方法では数百万・数千万掛けてしまう可能性もある。そうならないようにこちらで依頼先を選定して指導していくような形が多いです。

―――何から手を付けていいかわからない状態の企業も多いのですね。

まさにそうですね。

―――Teccoさん、元々は先生になりたかったというお話もありますが、こうした指導と繋がる部分はありますか?

いや、あれは動機が不純です(笑)僕元々『GTO』って作品の影響で、「中学校の先生になって2か月で辞めること」が夢だったんです。でもバイトで塾講師とかして、子どもって厄介だな、もう少し論理的に話が出来る“大人”と仕事したいな、ってなって就職しました(笑)

―――ほんとに関係なかった(笑) 

エンジニア組織のベースを作る

―――組織開発では、印象深かったエピソードなどありますか?

某新聞社のエンジニア組織の内製化を担当した時のことですかね。当時その新聞社にはエンジニア組織はありませんでしたが、内部には当然優秀な人材も多く、エンジニアチームを組んで開発スケジュールを具体化して段階を追って指導するうちに内製化が徐々に進んでいきました。今では他の企業からもどのようにチーム運営しているのか気になるとまで言われていたりして、自分が指導した文化が今も根差しているところを見ると感慨深く思います。

―――グレートティーチャー過ぎる。

簡単に言うと、エンジニア組織を作りたい会社に対して、イケてる他社の組織作りはどういう感じかというのを伝えて、それを実践させていく感じです。

他業界のIT事情を0点→50点へ

―――ぶっちゃけ、個人開発と組織開発どちらが楽しいですか?

今は組織を作る方が好きです。開発はもう140個くらいアプリ出していて、やり切った感が…(笑)もちろんアプリを伸ばして事業拡大もできますが、一人でやるよりも今ラグナロク株式会社で関わる人が合計20名くらいになってきたので、彼らと一緒に色々やっていきたいなって思いますね。

―――今、新しく案件を受ける場合にはどういった基準で選ばれていますか?

僕が大切にしているのは「ITと関係のない業界と仕事ができる」です。例えば、今は美容室のチェーン店のIT化をしています。元からIT化されているものを90点→100点に改善するよりも、今までそこに馴染みのなかった分野で0点→50点を狙う方が、跳ねそうだし、面白いじゃないですか。だから、他業界とのお仕事で爆発的な改善を狙う、みたいなところで選んでいます。

iOSアプリ開発の魅力と、シンプルであること

アプリの持つ「所有感」

―――やり切ったというアプリ開発ですが、こちらの魅力についても改めて伺いたいと思います!まず、個人開発開始の経緯についても教えてください!

キヤノンに入ってすぐなので10年位前ですね。当時Xperiaの初代が出た頃で、それを買って「これ面白いな。これで自分の考えていることを世の中に出せるな」と。最初はAndroidからでした。

―――なぜ“アプリ”だったんでしょう?

対比として、Webはあくまでネット上にあってそこにアクセスした辿り着かなくてはならないものですが、アプリは端末に入っていて自分が所有している意識を持てるものです。自分の持ち物の一つのような愛着を抱ける。それで、ユーザーが使ってくれる感覚がわかるのが好きですね。最近はスーダンとかサウジアラビアとかで僕の作ったTwitterのアプリを滅茶苦茶使ってくれていて、レビューも原語から翻訳すると「このアプリは神」「神に崇められるべきアプリ」とか書かれていて凄いウケました(笑)でも、多い日だと200人以上DLしてくれていたりもして…やっぱりそういうのって楽しいですよね。

―――そこからiOSへの以降も数多く実施されていますが、“iOS”に限った魅力はありますか?

ニーズ面で強いところです。日本では「スマホ」というとiPhoneを持つ人が昔は特に圧倒的に多く、過半数がそうでした。この状況は世界でも日本だけでした。特に若い女性にとってのiPhoneってハイブランドの財布みたいなもので、ブランドとして魅力がありますし、おしゃれなアプリならiOSで出した方が伸びるといった事情がありますね。

リリース数140超の背景

―――リリース数140と超多産な理由はどこに?「暇」以外でお願いします…

(笑)僕凄い飽き性なので、殆どのアプリは3日以内で作っています。「3日坊主」という言葉がありますが、3日内に作れば3日坊主にすらなりません。だからこそ短い期間で作ることは心掛けていました。

あとは、基本的に自分が作った製品ごときが売れるわけないと思っています。それで3日以内で作れそうなものをバンバン出していった結果ですかね。リリースしたのは140個ですが、アイデアは1000くらいあって、その中からやりやすいものを選んで出しています。

―――アプリの発想はどこから?

普段の生活で感じるストレスがメインですね。例えば、僕は北海道出身で、駅名など今でもよくわからないものが多いです。電車で「今何駅だろう?」とよくわからなくなったりしたので、ボタンを押したら今一番近い駅を教えてくれるだけのアプリを作ったこともありました。

―――その単体機能だけのアプリって逆に無さそう!

皆一つのアプリに色々機能つけたがりますよね。

仮にシンプルに作らなかった場合、開発者である僕はアプリの概要を分かっていて、そこから複雑化しても何がどうなっているのかを把握できますが、使う人は全然そんなことないんです。昔は個人開発時代で僕のような個人開発者ばかりがアプリを作っていて、何のアプリかよく分からないものはすぐアンインストールされたりもしたので。

モノ作り×「冷めた目」

―――開発のベースになるスピリッツのようなものはありますか?

これ良くお話してるんですが、一番大きいのはバンド活動だと思います。バンドってライブをしたりCDを出したりしますが、僕は後者が好きで、全てのCDは自作していました。曲を作って、パッケージ化して、皆に楽しんで貰うことが好きだったんですね。それが今はアプリに変わっただけです。音楽は日本語の歌詞なら日本語話者にしか理解されませんが、アプリは世界共通のものなので、例えばアラブの人が使ってくれていたりもするんです。だから、元からモノ作りが好きだったという意味で実は繋がっています。

―――なるほどなぁ…エンジニアとしてご自身を優れていると感じるのはどこですか?

基本的に物事を冷めた目で見ているところかもしれません。自分の作っているモノにあまり熱狂的になれないというか…それで作った後に冷静に分析することができるのかなと思います。

あと、よく「そんなに沢山リリースして、どうやって面倒見るの?!」とか聞かれますが、基本的に作ったアプリはそのまま手を加えず放置する放任主義なところも時間の節約になっているかもしれません(笑)

遊びゴコロと世の中のニーズと

―――Teccoさんのこの、ハードワークに陥らないスタンスは色んな活動に生かされている気がします。会社名にもどことなくポップさがあるというか。

FFですね(笑)うちの会社について少しお話すると、構成が少し変わっていて、正社員が一人も居ないんです。メンバーが社長・フリーランスが半々くらいで、更に「フルコミット禁止」しています。全員最高で週3勤務まで。それなら週4日は空くので、不満とかそんな溜まらないだろうなって。それでうちを基盤にしても、他で沢山やってもらってもいいし、遊びたかったらそれでも良い。ちょっと余裕ある方がなんかカッコ良いなって…(笑)みたいな、ワクワクしたところも楽しめたら良いなとは思っています。遊びゴコロは大切にしたいですね。

―――今後、やりたい自社サービスなどはありますか?

…あまりないんですよね(笑)世の中で困っている所を見つけて役に立てたら良いなと思っています。

Cameconも、社内で「面白そうだよね」「メンバーがカメラを持っているし」というところから、フォトコンテスト市場の歴史の深さと意外にレガシーな事情をうけて、UIを今の時代に沿ったものにすれば楽しそうだなという地点から始めました。こういう風に、やりたいところとニーズとをバランス見てやっていく感じでいきます。

今後エンジニアを目指す人へのアドバイス

開発を楽しむには

―――ここまでお話伺っていて素朴な疑問なんですが…Teccoさんって“開発”で苦しんだこと、ありますか?

うーん………ないんですよね。

―――うわーん!なんかそんな気がしたんですよね(笑)エンジニアとして、ずっと楽しく生きられる秘訣を教えて欲しいです!

好きになることが大切かなと思います。伸びている人って技術が好きな人・モノを作るのが好きな人がやっぱり多いですよ。

よく、駆け出しエンジニアの人の質問で「土日も勉強した方がいいですか?」といったものを目にしますが、正直、伸びているエンジニアからすると「土日も“好きだからやっちゃう”」。僕も暇があればプログラム弄っていることが多いです。好きだからやる、そして伸びる。だから先の質問をしている人はその時点で技術が好きじゃないんだなと僕には思えます。「お金のために」エンジニアになりたがる人は多いですが、極端な話「お金を1円も貰えなくてもやりたい」方に寄っていく方が、自分も楽しいし、仕事でも伸びると思います。

エンジニアとして差別化を成功させるために

―――重みがある。他のエンジニアさんと自分のキャリアを差別化していくためには何が必要ですか?

モノをリリースするのが一番楽だと思います。人事採用を担当していた頃、合計200名ほどのエンジニアと面接しましたが、スキルを言葉で説明されるよりも「これ作りました」と見せられた方が早いです。エンジニアって、アプリを世に出すとソースコードとか全部見られちゃうので、実際結構怖くてひた隠しにする人も多いです。でもそれを乗り越えて積極的に公開しなければ成長もしないし、自分のレベルも伸びません。アプリをリリースしていれば、自分のことを他人に伝えやすくなりますし、そうしていくべきですね。

―――明確なご指南ありがとうございます!最後にTeccoさんの今後の予定についても教えてください!ご自身のリリース予定は!?

アプリは、僕はやっぱりもうやり切った感があります。作る暇はあっても自分の事業が楽しいので、今はそちらをメインでやっていこうかなと。まぁ、アイディアはまた溜まってきているので、気が向いたら作り始めるかもしれません。

―――恐ろしいお人! 

インタビューを終えて

錚々たるご戦歴とは裏腹に、周囲にもご自身にもまったくプレッシャーを感じさせないクールさで常に新たな物事を世の中に出し続けるTeccoさん。一貫したシンプルさで多産を実現するなど、効率とクリエイティブのバランス、そして常に余裕を感じさせるスタンスが最高にカッコ良かった…。本日は、本当に貴重なお話ありがとうございました!

Teccoさんの…

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監修者

山田卓init株式会社代表取締役
エンジニア経験0の状態から1年間独学で勉強して独立
さまざまなiOSアプリの開発に携わる
2021年6月にiOS専門のオンラインプログラミングスクール「iOSアカデミア」を開校。iOSエンジニアを目指す人のサポートにも力を入れています
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