iOSアプリ開発の参考書として大好評『作って学ぼ iOSアプリ開発』の出版をはじめとして精力的にキャリアを積み上げ、技術者としてご自身を確立させつつある「そっしーさん」がご登場!プログラミング愛や胸に抱かれた覚悟、見据えた将来像など、クールで戦略的なお仕事ぶりの間に垣間見える情熱を伺います!
プロフィール
田中颯志(たなか・そうし):以下「そっしーさん」
大学在学中より個人開発への参加、アルバイト、長期インターンなど様々な職務形態・環境を経験しながらiOSアプリ開発を独自に習得。本年度大学卒業を機に大手C社へ新卒入社されました。著作『つくって学ぼ iOSアプリ開発』は初学者から高い評判を得ています。
インタビュワー
希代のプログラミング好きが開花!叩き上げたエンジニアリングと意外過ぎる“新卒”の肩書
実はそっしーさん、“新卒”なんです
―――早速ご登場いただきましょう!そっしーさんです!本日はどうぞよろしくお願いいたします!
よろしくお願いします!人生初インタビューです(笑)
―――なんと、光栄です!そして、C社へのご入社おめでとうございます!
ありがとうございます。
―――本日第一線で活躍される現役iOSエンジニアとしてご登場いただいたそっしーさん!開発のご経験の豊かさから見過ごしがちですが、一応、来年“新卒”でのご入社予定ですよね。
はい。長期インターンでお世話になった会社を離れ、来年度から新卒入社です。今月中旬より入社先でアルバイトでの業務を開始したところです。
―――簡単に、これまでのご経歴についてお話頂けますか?
Progateというプログラミングの基礎が学べるサイトで勉強を始めたことがきっかけで、他のエンジニアさんの個人開発へ参加させてもらったり、企業でのアルバイトや長期インターンを経験してきました。
現在は仕事と大学の研究とを並行して行っています。大学は今年9月末に卒業見込みです。
【?】Progateとは?
Progateは、初学者からプログラミングの基礎を学ぶことのできるオンラインレッスンのサービスです。
プログラミングは初期から実務で叩き上げ
―――プログラミングの下地はどこで身につけられたのですか?
入口は2018年に始めたProgateですが、実際に知識を身に着けられたのは、大部分がGoogle先生のお陰です。(笑)後は、実務の中で経験を積んでいった感じですね。
―――さかのぼった問いですが、大学でのご専攻は情報系だったのですか?
いや、全然関係ないです。理学部の生物分子学科でした。
―――全然違う!(笑)すみません、それではProgateを始められてからのお話に戻らせてください。実務というと具体的にはどのようなことをされたのでしょう?
プログラミングを学び始めた当初は、業界のことも全然わからなかったので、まずはエンジニアの人との交流を広げようと交流会や勉強会に参加していました。
そこでY社のエンジニアさんが個人で管理されるプロジェクトで「きみもやってみる?」とお声がけいただいて。はっきりした契約もなく口頭での約束でしたが、それに参入しました。ただ、その時は全然成果をあげられませんでした。
次が、スマホケース制作アプリを自社サービスとして持っているD社に、アルバイトとして入りました。入社は、自分の成果物をTwitterで公開して雇ってくれるところを募集したのですが、それに先方からお声掛け頂いたのがきっかけでした。
―――すごいですねそれ!今そのtweet見られないのでしょうか?!
消しちゃったんですよね恥ずかしくて…(笑)でもその会社でSwiftの実務経験を開始できました。社長に「Swiftやってみる?」って言われて学び始めて、実務で叩き上げられましたね。
―――次が長期インターンですか?
はい。現在の所属先の一つ前に、A社での長期インターンを11ヶ月やりました。A社についてはWantedlyで知って“実力主義”という言葉に惹かれて応募して、採用フローで入社できたという感じです。
【?】個人事業主ご用達サービス「Wantedly」とは?
Wantedlyは、2012年からウォンテッドリー株式会社によって開始された会社訪問マッチングを行うサービスであり、「ビジネスSNS」の一種です。2021年4月現在、エンジニアや若手社員を含めたおよそ300万人が登録し、37,000社の企業とのマッチングを行っています。
参考:Wantedly
―――11ヶ月というと新卒の1年にほぼ相当する期間です。鍛えられそうですね。
本当に怒涛でしたね。
最初はタスクが振られたときにどこのファイルのどのコードを参照する必要があるのか、どこを探すのか、ということに慣れるために1ヶ月間を費やしました。
次に、それまで先輩に教えて貰っていた業務を自分でできるようにするという“自立”の期間、その先ではRxSwiftという、いわゆる躓きやすいとされている言語を習得する期間がありました。
さらにそこから設計の部分、アーキテクチャを身に着けようと、新規開発を志願して担当させてもらったりもしました。その後別の新規案件を担当して、その後転職、という感じです。
“動く”って面白い!
―――叩き上げでエンジニアリングを身につけられたそっしーさん。現在のご姿勢からは“技術好き”の香りがプンプンするのですが、率直に、プログラミングの面白さって何だと思われますか?
僕が一番面白いと思うのは、“アイディアを形にできる”ところです。何かを形にするという点では、たとえば“文字を書く”というのも同じですが、それによって出来上がるのは文章です。プログラミングの場合、自分の書いたもの、つまりコードによってプログラムが“動く”というのがものすごく魅力的に感じます。この面白さはずっと根幹に感じていますね。
Progateをやり始めた瞬間から、自分にとってはほとんど運命の出会いでした。昔からパソコンは触っていて、タイピングするだけで楽しめちゃう方だったので、エンジニアならタイピングが仕事にできるっていう衝撃もありましたし、コードを書いて、さらにそれが動くっていうのが、もう…!一瞬でのめり込みました。
最初の方は、iOSアプリ開発ではなく、HTMLでCSSを工夫してボタン押下で視覚的に動作するようなプログラムを作っていました。
―――なんだかお話しぶりからも楽しさが伝わってくるようです。“iOS”に至ったのに理由はありますか?
実務でSwiftを学び始めたというきっかけが一番大きいです。さきほどお話したアルバイトで入ったD社の社長の言葉で、やってみようと思えたことですね。
あとは、僕自身元々Apple信者だったので、Apple社が作った言語ということなら、と最初からSwiftには良い印象を抱いていたのも大きいと思います。身に着けてみた今、もちろん難点もありますが、基本的には機能も含めて、やはりSwiftは優秀な言語だなと思っています。
―――習得される過程で大変だったことはありますか?
もちろんあります。一つ目はエラー解決です。これはエンジニア独特の苦悩かもしれません。最初のころは、コードを弄っているうちにどんどん複雑になってしまうので、最初からやり直したりして、一つのエラーに2週間かかることもありました。
次に苦労したのが学習手順です。Progateは、楽しいですが、どういう風に学習していくことが仕事に繋がるのかというその先の部分については全くヒントがなかったんです。僕はそれで、ほぼ全部のコースをやりました。半年以上は少なくとも毎日やってたかな…
―――2週間のエラーは普通病んじゃうと思うのですが、そっしーさんが屈さず居られたのはなぜでしょうか?
大前提として、僕「簡単に出来ることって誰にでもできる」と思っているんです。逆に、難しければ難しいほど自分の中では成長につながる。だから難題には立ち向かうしか選択肢がなかったですし、難易度が苦になることもなかったです。
―――見習いたい…周囲とご自身とで、タフさのギャップを感じることはありますか?
ギャップというか、自分は叶うなら持てる時間全てをプログラミングに割きたいと思っているんですが、同じ熱量を持った人は確かにあまり居ないなとは感じますね。
コンプレックスこそ最大の武器!組織の代表として知られるエンジニアを目指す現在
起爆剤は “コンプレックス”
―――強靭なメンタルでエラーにも負けずエンジニアリングに邁進していらしたそっしーさん。この性質は元からでしょうか?
まず、自分がそもそも何かを頑張ろう、勉強を頑張ろうと思い立ってProgateを始めたというスタートラインは、現在の立ち位置の元になっています。
僕はそもそも浪人も休学もしているので、「人より遅れている」というコンプレックスがあってそれがあらゆる頑張りの起爆剤にはなったと思います。就活でも、皆がしているSPI対策なども“資格より経験”という信条で準備しないまま、気付いたらこのキャリアに落ち着いていたという感じですね。(笑)
―――コンプレックス、というと少し意外な印象です。
単純に自分が負けず嫌いだという性質もあるかもしれません。
確かに、浪人を経験したことで他の人より色々と出遅れている感覚がありましたが、そこから抜け出そうとしたときに、たとえ自分一人が意識を高く持ったところで、今(当時)居る環境の人と競っていても仕方がない、上には上が居るし、自分と同じように意識を強く持った人達と競っていかなくてはダメだということを思いました。
それで今でも、「見えないライバルに負けたくない」とは思っています。
頑張ろうと思ったきっかけと指標
―――マインドが完成されすぎている!
自分のマインドだけではなく、「一緒に頑張ろう」と言い合える友人の存在も非常に大きな支えでしたよ。やっていることも違うし、多くの時間を共有しているわけでもないんですが、定期的に進捗を話したり、高めあえる人が居ます。
例えば僕がProgateを始めるきっかけになったのは、その人の「俺Progateやるわ」という一言でしたし、それ以降でも、いくら勉強しても仕事に繋がらならないことで心が折れかけていた時期に、その人が「技術力があることと稼ぐことは違う」と声を掛けてくれたことがありました。
それで、それがきっかけで、自分を売り込むことを始めて、Twitterを活用することでD社から声をかけられたり…様々なターニングポイントで、その友人の言葉は自分に大きく影響してきたと思います。
―――そっしーさん、お話しているとすごく柔らかい雰囲気でお優しい落ち着いた方だと感じますが、内面にアツい部分が垣間見えるようです。
(笑) 新卒入社の3次面接でも、「エントリーシートを見てゴリゴリの体育会系の人だと予測していたけど、全然そうじゃなかった」って言われたりしました。
自分でも、熱いところは確かにあるかもしれないと思います。対面では落ち着いて見られますが、「困っている人を助けたい」というのは今の僕の原動力の一つでもありますし…
―――「困っている人を助けたい」ですか。
そもそもプログラミングを始めようと思ったきっかけについて、Progate に辿り着いたのは友人の言葉でしたが、技術を身に着けようと思った直接のきっかけとして、YouTubeで色覚異常を持った方が補正眼鏡をプレゼントされて感動するという動画を見て、それに感銘を受けたことがすごく大きかったです。
「こういう人を助けたい」と同時に、いざ助けるタイミングがきた時、自分に力がなくて助けられないのは嫌だなと思いましたし、その気持ちを原動力として今でも頑張れているのかなと。
―――素敵ですね。以前SNSでのご発信で、お母さまへの恩返しをしたいというようなお話もありました。
そうですね…うちは男3人兄弟の母子家庭だったので、金銭面でも大変だったと思うんですが、そんな中母は勉強して資格を取り、優良企業に勤めて、そのお陰で自分達は何不自由なく暮らしてこられました。
どんな時でも子供たち優先で、教育に対する費用を惜しまず出してくれる母のそういう全ての姿勢に、困難の背景を知っているからこそ、僕はすごく恩を感じていて…だから、早く安心させたいと思っています。
今後目指すのは組織での代表的な存在
―――熱いお志を胸に、目指されるのはどのようなキャリアでしょうか?
僕は、マネージャーよりスペシャリストを目指したいです。今はとにかく技術力を高め続けて、解決できない課題を無くしていくというのがキャリアのイメージですね。
必要なタイミングで力を発揮するためには、何かしら尖らせておくことが大切かなと思っています。技術領域で今はまだ経験の浅い部分をカバーしながら、既にある知識をより深めていって、今後関わる人達に還元していくことが目標です。
―――素敵ですね。人と関わるとなると、やはり組織での活躍がメインでしょうか。
そうですね、僕は個人で開発を進めるよりも、組織に貢献したいという気持ちが強いので。
組織で働くうえでは、技術力以外でも「周りが働きやすい環境づくり」も大切だと思っています。「周りが話しかけやすい雰囲気を作る」とか、「傍目に見て忙しそうにしない」とか…ボスではなくリーダー的な、共に働きやすい存在でありたいとも思っています。
―――うっかりするとすぐに“新卒”というのを忘れそうになりますな…(笑) 組織で活躍されるエンジニアとして、将来的な夢は何でしょうか?
夢は、会社を代表するエンジニアになることですね。周囲の人にも、キャリアや知識で影響を与えられる存在になるというのも目標です。
『作って学ぼ iOSアプリ開発』出版背景と、エンジニア教育への想い
出版の背景は2つ
―――そっしーさんのキャリアの特徴として、ご著書『作って学ぼ iOSアプリ開発』も欠かせません。
『作って学ぼ iOSアプリ開発』
購入…Amazon
―――出版された経緯についても改めて伺えますか?
『作って学ぼ iOSアプリ開発』の執筆を始めたのは2020年でした。そこから3、4ヶ月で書き上げて、Kindleで出版しました。
―――初学者からの評価も高い『作って学ぼ iOSアプリ開発』。ご執筆のきっかけは何だったのでしょう?
一番は「世の中の教材に不満があったこと」です。プログラミングの参考書では、基本的な構文が本の大部分を占めていて、アプリ開発に関してはちょっとしたサンプルを作るのみ、というようなものが殆どです。数冊買えば皆同じで、それじゃ買う意味がないと僕は思ったんですね。
そして次に、そういう既存の参考書では、学習する人は絶対にプログラミングを好きにならないとも思いました。なので、これらの点をカバーする参考書を作りたいと考えたんです。
手取り足取りサポートを入れながら初学者であっても1冊を通して1つのアプリをちゃんと作れるようになることで、この教材を手に取った人がプログラミングに夢中になるきっかけを作ることが出来ればなと。
―――プログラミングの楽しさを知るそっしーさんだからこその方向性ですね。
僕ものめり込んだ一人ですが、たとえばProgateの学習ツールとしての優秀さは“夢中になるきっかけ”として非常に効果的だというところなので。楽しく作れるというのはすごく大事です。
プログラミングスクール選びと学習のヒントも!
―――学習ツール選びとも繋がる話題として“プログラミングスクール”についてもご意見を伺いたいです。まず、スクール選びで大切なことは何でしょうか?
まず、プログラミングスクールの良し悪しは、やはりそこで提供されるプログラムの内容によると思います。大体のスクールがかなり高価な印象を受けるので、入学時には費用対効果を考えることが大切です。
一部のスクールでは広告の内容で夢を見させるものも多いですし、必要以上に短期間の学習スケジュールは、採用する側も不安を感じるので、実際に働く場面も視野に入れつつ、現実的な計画を立てること、それに見合ったプログラムのあるスクールかどうかを見極めることが重要だと思います。
―――スクールを活用する際のポイントはありますか?
まず、スクールは自分がどのように学習を進めていくのかという基準作りに役立つと思います。講師が居るので、ロードマップの観点から相談したりできますよね。また、自分に何が足りないのかについても聞いてみると良いと思います。講師目線での意見は参考になると思います。
あとは、“効率化”の観点もとても重要です。短期間の学習スケジュールが良いということではなく、どれだけ限られた期間で自分のスキルを担保していけるかということを考えましょう。
やはり一番力がつくのは実務なので、それに至るまでを効率よくこなしていく必要はありますね。実際にプログラムを受けてちゃんとエンジニアになるためには、受け身の姿勢ではなく、ちゃんと自分で難題をとりに行く積極性は何より必要だと思います。
エンジニアを目指す人へ
―――エンジニア人口は今後増えてくることが予測されています。初学者の方に向けてアドバイスを頂けますか?
初めは誰しも、わからないことだらけだと思います。エラーが続いてしんどい期間など、「わからないことだらけで、自分はエンジニアに向いていない」と感じてしまう人って多いと思いますが、頑張っていたらブレイクスルーが必ず訪れると僕は思っています。
わからないことは成長のチャンスです。なので、それを辞める理由にするのは勿体ないですよ、とは伝えたいです。
あと、勉強するときには、アウトプットもしっかり意識することですね。インプットだけでは意味がありません。そして、アウトプットはGithubなどでちゃんと継続して残しておくことをおすすめします。
後で見直せるだけじゃなく、自分の努力の証明にもなりますし、転職するときにはそれが大いに役立ちます。ポートフォリオは滅茶苦茶大事です。それで人生変わりますからね。
―――ポートフォリオ作成のコツはありますか?
僕は何でも短期集中型なので、ポートフォリオづくりの期間も「これだけ」と決めて集中して作っていました。
A社への入社時のアプリ制作課題は3日で作ったんですが、2日目などは寝ずに開発しましたし、3日間通して朝から晩まで継続して作り上げました。新卒の就活に使ったポートフォリオも、長期インターンの最中だったので業務もありつつ、1週間という期間を丸々とって、スピードを意識しながら一気に仕上げました。
ある程度の速さで開発できるというのも一つのアピールになると思います。
―――ありがとうございます!最後に、エンジニアとして大切にするべきことを教えてください!
エンジニアとして最も大切なのは、先ほどのトライ&エラーふくめ、“わからない”ことを楽しむことだと思います。
エンジニアになるにあたって、「なんとなく稼げそう」という動機でスタートした人は、わからないことが出てきた時「自分にはエンジニア向いていないな…」という方向に気持ちが向きがちだと思うんですが、実際エンジニアの業務で(とりわけ初期に)大部分を占めるのはトライ&エラーです。
最初のことはわからないことだらけだと思いますが、それを楽しめるかどうかが肝心です。頑張ってくださいね!
インタビューを終えて
大学在学中からご自身の道を一途に追い求め、プログラミングへの愛で叩き上げのスキルに磨きをかけてきたそっしーさん。論理的で冷静な行動のベースにある、人間に対する深い理解と温かな目線が印象的でした。技術特化を通して周囲に貢献したいという目標は、組織で生きるうえで最も必要とされるエッセンスではないでしょうか。今後のさらなるご活躍が楽しみでなりません!本日は貴重なお話を頂き、本当にありがとうございました!
そっしーさんのTwitter… https://twitter.com/Sossui_Swift
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監修者
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エンジニア経験0の状態から1年間独学で勉強して独立
さまざまなiOSアプリの開発に携わる
2021年6月にiOS専門のオンラインプログラミングスクール「iOSアカデミア」を開校。iOSエンジニアを目指す人のサポートにも力を入れています